商店街の古時計と忘れられた約束

夕暮れの商店街は、色とりどりの灯りに包まれ、いつもとは違う時間の流れを感じさせた。

奈央は古びた時計店の前で立ち止まった。ガラス越しに見える壁掛け時計は、どれも独特の刻み音を奏でていた。店の主人は昔からそこにいる老人で、奈央は子どもの頃から何度か訪れていた。

今日は何気なく店に入り、棚の隅に置かれた一つの古時計に目が留まる。それは止まっていて、長い間放置されていた様子だった。奈央はふと思い出した。幼い頃、ここで母と一緒にこの時計を見て、母が「いつか動くように直してあげようね」と言っていたことを。

店主に修理の相談をすると、彼は静かに頷き「直すのは簡単じゃないが、挑戦してみよう」と返した。奈央はその言葉に何か温かい気持ちを覚え、修理の進行を見守りながら、古い約束のようなものを胸の奥で感じていた。

数日後、動き出した時計は穏やかな音を奏で、商店街の人々の足を止めては微かな笑顔を生んだ。奈央はその不確かな時の流れの中で、過去と未来がつながる瞬間を繊細に感じていた。時計の針は、確かに止まっていた時間を少しずつ動かし始めていた。