遠い日々の棚の中で

夕暮れ時、陽介は古びた家の二階にある埃まみれの棚の前に立っていた。何年も開けていなかった箱を手に取り、ゆっくりと蓋を開ける。

そこには、彼の子ども時代の写真や手紙、小さな人形が無造作に詰め込まれていた。箱の中の一枚の写真が彼の目を捉えた。それは若かりし頃の両親と兄妹の笑顔が写ったもので、彼には遠い昔のように感じられた。

陽介はその写真を手に取りながら、家族の歴史を振り返った。彼らの間にあった距離、そしてかつて確かにあった暖かさを胸に刻む。両親は何度も口論を繰り返し、兄妹も別々の道を歩んできたが、この写真はまるで失われていないかのように輝いて見えた。

彼は、家族のかたちが完璧でなくても、思い出は消えないことを知っていた。棚の中のものに触れ、過去の時間の流れを感じながら静かな夜に包まれていった。焦らずに、今はただ、その記憶とともにいることが彼にとっての平和だった。

翌朝、陽介は再び箱を閉じ、棚に戻した。異なる日々に刻まれた欠片が静かにそっと存在し続けることに、彼は満足していた。家族の物語は続き、全てが語られるわけではないが、確かに彼の心の一部になっていた。