エレベーターの中の小さな祝祭

ビルの古いエレベーターは、毎朝違う顔を見せる場所だった。今日は、42階で働く社員たちの間でひそかな小さな祝祭が開かれようとしていた。

蓮はその出来事を偶然目撃した。彼は通常通り朝のエレベーターに乗り込むと、中には数人の同僚が静かに笑いながら飾り付けをしていた。彩り豊かな紙飾りと小さな風船が、狭い空間に鮮やかな祝いの雰囲気を醸し出していた。

しかし、突然エレベーターが急停止し、人々は慌てる。蓮は冷静に周囲を見渡し、状況の説明を求めたが、反応は混乱と焦りで満ちていた。そこで、彼は自分の持っていたケーキを取り出し、みんなでこの不便な瞬間を少しでも明るくしようと提案した。

閉じ込められた狭い空間で、みんなは分け合ってケーキを食べ、冗談を言い合った。仕事のストレスや日々の忙しさを一時忘れ、誰もが小さな祝いの瞬間を共有した。蓮は、祝祭の本当の意味を、その場の温かい空気から感じ取った。

修理が終わり、エレベーターが再び動き出す頃、彼らはそれぞれの階に戻っていった。誰もがその小さな“閉じ込められた祝祭”を忘れず、心に温かい思い出をしまい込んだ。蓮は笑いながら思った、人生には思わぬ場所に幸せがあるのだと。