静かな夕暮れの約束

夕暮れ時、家の窓から見える公園のベンチに、祖母と孫が座っていた。 二人は何も話さず、ただ静かに空を眺めている。

この日は、毎年続けてきた夕方の散歩の日だった。祖母は体調がすぐれなかったが、孫はその時間が大好きだった。 しかし、今夜はいつもの笑顔が見られず、空気は少し重たかった。

孫は、ふと祖母に尋ねた。「おばあちゃん、昔の話を聞かせてよ。」祖母は微笑んで、ゆっくりと昔話を始めた。 話は遠い昔、戦後の厳しい時期の話から、家族のさまざまな記憶まで広がった。

その話を聞きながら、孫は祖母の表情が少しずつ柔らかくなっていくのを感じた。 言葉少なに見えた祖母の心の奥にある強さと優しさを、改めて知ることができた。

日が沈み、空が紫色に染まる頃、祖母は静かに「ありがとう」と言った。 孫は何も返さず、その言葉を胸に刻んだ。

この静かな夕暮れの時間は、二人だけの特別な約束であり、これからも続くことを二人はなんとなく感じていた。