朝の郵便配達と謎の封筒

早朝、郵便配達員の雄大はいつも通り町の静かな通りを自転車で走っていた。爽やかな風が顔に当たり、彼の毎日の仕事に少しだけ楽しさを与えていた。

その日、いつもとは違う一枚の封筒を手にした。差出人の名前も住所もなく、ただ薄く書かれた文字が見えた。「読まずに捨ててください」。雄大は不思議な気持ちでその封筒をポケットに入れた。

配達を続ける中で、彼の心はその封筒へと引き寄せられた。なぜ誰かがこんな指示をするのか、もしここで捨てれば何かが起こるのかもしれないと考えた。好奇心が彼を押し動かしたのだ。

仕事が終わった後、雄大はこっそりと封筒を開けてみた。中には一枚の古びた写真と、小さなメモが入っていた。メモには「これは秘密の約束の証」とだけ書かれていた。

雄大はその写真に映る場所が心当たりがあった。子供のころ遊んだ公園の隅で、もうずいぶん長い間訪れていない場所だった。翌朝、彼は自転車にまたがり、その公園へ向かった。

そこでは、見知らぬ老人がベンチに座って待っていた。彼は静かに雄大に話しかけた。「あなたにこれを渡すために長い間探していたんだ」と、もう一枚の写真を差し出した。その写真は若い頃の自分と、かつて約束した友人の姿だった。

謎は完全に解けたわけではなかったが、雄大はその出会いを通じて、時間や記憶の不思議さを感じていた。人生には解決できないこともあり、そのまま受け入れることも大切だと気づいたのだ。新しい一日が始まると、彼は再びペダルを踏みながら、いつもの道に戻っていった。