不思議なバーゲンの終わり方

秋の冷たい風がショッピングストリートを吹き抜けていた。美紀は久しぶりに大きなバーゲンセールの日に街へ出かけた。目的はシンプルで、新しいコートを手に入れることだった。

しかし、店に入ると予想以上の混雑に驚いた。セール品をめぐる熱気で店内は息が詰まりそうだった。美紀は慎重に商品を選んでいたが、隣の客と小さなトラブルが起きた。彼女が最後の一つと思っていたコートをその人も狙っていたのだ。

「このコート、私が先に見ていたんですけど…」隣の女性は不機嫌そうに言った。美紀も譲る気はなかった。二人は言い争いになりかけたが、店員が静かに割り込んできた。「どちらも気に入っているようですから、少し外で待っていただけますか？商品はもう一着、すぐに入荷します。」

美紀は待つ間、店の外にあるベンチに座り秋の風を吸い込んだ。ふと、その女性とのやりとりを振り返ると、なぜか怒りは薄れていた。競争はあったけれど、争いが生む疲労がそれ以上に大きいと感じたのだ。

数分後、新しいコートが到着し、二人はそれぞれ購入した。美紀は結局、最初に決めていたデザインではなかったが、暖かくて満足のいくものだった。外に出ると、もう夕暮れで、街灯が柔らかく灯り始めていた。

帰り道、美紀はバーゲンの熱狂から離れ、一人の時間の価値を考えていた。勝ち負けではなく、自分のペースで買い物を楽しむことの大切さ。それが、今日の小さな収穫だった。