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あの日、繁華街の中にある大きなショッピングビルに入り込んだ玲子は、まるで迷路に迷い込んだように感じた。昼過ぎのそのビルは賑やかで、様々な店が連なっていたが、入り組んだ通路がどこも似ていて、自分の居場所がわからなくなってしまった。
玲子は新しいスカーフを探していた。薄手で色鮮やかなものを想像しながら、店を何軒も回ったが、どの店も似たような商品ばかりで、買う気が失せていった。時計を見ると、思ったより時間が過ぎており、疲れも感じ始めていた。
ちょうど休憩を取ろうとカフェに入ったが、そのビルには不思議なルールがあった。会計時に渡されるカードで同じ時間帯ならビル内のどの店も利用できるシステムだ。しかし玲子はカードを失くしてしまい、カフェから出られなくなった。
困惑した彼女はスマートフォンでビルの案内を探そうとしたが、Wi-Fiがつながらず電話もできなかった。誰かに助けを求めようとキョロキョロしたが、人の流れは早くて視界はすぐに埋まった。
そのまま静かに席に座り、深呼吸をすると、なぜか不安よりも少しだけ面白くなってきたのだった。混沌とした買い物の世界も、整理されていないままで楽しめる。玲子は意図せぬ迷子の時間を静かに味わうことに決めた。
いつかカードを見つけて出られる日が来るだろう。でも今はただ、この迷路の中で、ゆっくり過ごすだけだった。ショッピングの目的は忘れて、偶然の発見と沈黙の時間が彼女に新たな感覚を与えた。
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