忘れられない誕生日の夜

誕生日の夜、陽介は古い友人たちと静かなカフェで会う約束をしていた。彼にとって誕生日はいつも特別だったが、今年は忙しさにかまけて準備がほとんどできていなかった。

カフェに着くと、友人たちはすでに集まっていて、テーブルには小さなケーキとキャンドルが用意されていた。しかし、その夜は予期せぬ停電が起こり、店内は暗くなった。みんなの笑い声が一瞬途切れ、戸惑いが広がった。

陽介はちょっとした混乱の中で、ろうそくの火を吹き消す代わりに、壁のライトアップを思い出した。店主が懐中電灯を持ってきて、店の壁に映る影を利用して即席の影絵ショーが始まったのだ。

友人たちは影絵を見ながら笑い、いつもとは違う形の祝福に感動していた。陽介は特別な演出がなくても、心から祝われることの幸せを改めて感じた。

停電はすぐに解消されたが、次に明かりが戻ったとき、陽介と友人たちはすでに普通とは違う一体感でつながっていた。夜は静かに過ぎ、いつまでも忘れられない誕生日の思い出になった。