最後の一投の謎

夕暮れ時の川辺に、青年の翔太がひとりで座っていた。彼は高校時代からずっと野球部のエースだったが、今は社会人リーグで細々とプレーしている。

その日、彼のチームは重要な試合を控えていた。翔太は練習の最中、ふといつも使っているグローブに違和感を覚えた。よく見ると、縫い目がほころび始めている。試合前日に新しいグローブを買う余裕はなく、どうしようか迷っていた。

試合の日、翔太は不安な気持ちを抱えながらマウンドに立った。序盤は調子よく投げていたが、４回目の投球でグローブが完全に破れてしまった。観客もざわめき、彼自身も焦った。

その瞬間、翔太は自分の心を落ち着け、グローブの破れた部分を上手くカバーしながら投球を続けることを決めた。物理的な問題があっても、自分の技術と集中力は変わらないと信じたのだ。

結果的に、彼はその試合で無失点で押さえ、チームの勝利に貢献した。試合後、仲間から「最後の一投は特に力強かった」と褒められたが、翔太は笑って「グローブが助けてくれたわけじゃない」と答えた。

この出来事は、物の状態に左右されず、自分の力を信じる大切さを翔太に教えた。しかし、彼のグローブはその後修理されず、次の試合までに新しいものを買うかどうか、まだ決まっていないままだった。