静かな海辺のランナー

海沿いの小さな町で、浩一は毎朝ランニングをしていた。海からの風が心地よく、彼にとって走ることは体だけでなく心のリフレッシュにもなっていた。

ある日、いつもの道を走っていると、遠くに見慣れない若い女性がいた。彼女もランナーのようで、ときどき立ち止まって海を見つめていた。浩一は話しかけようか迷ったが、そのまま通り過ぎた。

その後数日、彼女は毎朝同じ時間に同じ場所に現れた。浩一は次第に彼女の存在が気になり、ランニングコースを少し変えて彼女の近くを走るようになった。彼女はふと気づき、軽く挨拶を交わした。

彼女の名前は美咲で、かつては陸上選手だったが、けがで引退してしまったという。走ることはやめられず、治療も兼ねて海辺を歩いたり走ったりしていると言った。

浩一は美咲の話に心を動かされ、彼女に無理をしないように勧めた。二人は競争するのではなく、静かな景色を楽しみながら一緒に走ることを選んだ。

ある朝、空に朝焼けが美しく広がり、二人は言葉少なに穏やかな時間を共有した。速さや勝負ではなく、走ることの意味を改めて感じる瞬間だった。

この静かな海辺のランニングは、彼らに新しい価値をもたらしたが、結局は何も急がず、日々の小さな一歩を大切にすることが大事だと気づくのだった。